ひとともり。建築家がつくる多目的スペース [奈良のこと]
本日は、またしてもご近所にできた面白そうな場所をご紹介します。
先日の西村邸さん(奈良市花園町)に引き続き「いい宿みつけた。」シリーズと勝手に題してみましたが、本日ご紹介する「ひとともり」さんは宿というよりは建築事務所に隣接する多目的スペース。
観光の方だけでなく、地元奈良の方でもカフェ等を利用できますのできっとお役に立つ情報だと思います。場所はならまちの東、福智院のすぐ斜め前(ブログの最後に地図を掲載します)。
と、その前に。
本日10月22日は火曜日ですが、「即位礼正殿の儀」が行われる日とのことで祝日です。
というわけでACART LIFESTYLEには猫スタッフが出勤しています。
つい3日前にやってきたところですが、本日の担当はいつものふたり。
まず体力には自信のある若手の末っ子ですが、疲れは隠しきれないといったところでしょうか。
もうひとりはあからさまに疲れたアピールの次女。
前回出勤の土曜日も雨が降ったりやんだりの空模様で少し退屈だったのですが、今日は人が多いのか少ないのかさっぱり読めない感じです。
とにかく本日もこのふたりが皆様のご来店をお待ちしています。
さて「ひとともり」さんのお話です。
先程書いたとおり、ここは奈良に拠点を置く建築事務所に隣接する多目的スペースです。大手建築事務所に勤められ日本全国に素敵な作品をつくってこられた建築家の長坂さんが、独立して開業されたのが建築デザイン会社「ひとともり」。
施設の概要としては、建築事務所+ゲストハウス+レンタルスペースとなりますが、そのレンタルスペース部分を使った「生姜足湯休憩所(カフェ&フットバス)」が10/11(金)から週末のみオープンしています。
場所は国道から少しだけ東に入った、福智院に向かう路地に面した古い町家。「町家」と書きましたがとてもそうは見えないほどにモダンにリノベーションされており、その建物の土間部分がカフェスペースです。「生姜足湯休憩所」の名前のとおり、桶で提供される生姜湯に足をつけて、お茶を飲みながらゆっくりリラックスすることができます。
もともとこの町家にあった井戸の水と、国産の無農薬天然生姜をたっぷり使った生姜湯は、リラックス効果のほか、疲労回復や免疫改善などに効果があるのだとか。暑かったり寒かったりとお天気がころころ変わるこの時期の体調管理はもちろん、ならまちを歩き回ったり、高畑方面から戻って来たりした際にも、疲れがとれていいかもしれません。
そして特筆すべきことがもう一点。実はこの足湯、足を拭く際に贅沢にも奈良名産の蚊帳ふきんを使っておられるのです。「蚊帳生地ふきん」ではなく「蚊帳ふきん」!そう当店でもお取り扱いしている吉岡商店さんの蚊帳ふきんです。
生姜湯で足元から疲れを癒やした後には、ぜひその吸水性ややわらかな肌触りを体験してみてください。
店頭でも販売されています(あっ、商売がたき!?)ので、お土産にもぜひ。
そして白い壁の明るいカフェスペースの奥には、照明を絞った落ち着きのある居間、そしてその奥には中庭が見えます。さらに奥に見えるのが建築事務所の棟。
古い町家を改装してできたレンタルスペース部分、そしてそこからつながる一日一組限定のゲストハウス部分など、もともとそこにあった土地や木々を生かした空間は、そこで過ごす人の時間や心の中までもデザインしているように感じられます。
カフェや宿でつかわれている家具や設備にも気が配られており、まさに建築家による極上の空間。
さらに今回特別にゲストハウス部分も見学させていただきました。
上の写真は夏のはじめごろ、工事中の一階部分の写真です。
実は今から4ヶ月ほど前、ACARTは改装中の現場を見学させてもらったことがありました。このときはまだ天井が剥がされ、梁だけを残して二階部分の床も無い状態だったので、その後の工事でいったいどんな空間になったのか、とても興味があったのです。
そしてこちらが完成後。
二階部分、昔ながらの日本家屋の狭い階段をあがると、こちらも明かりを絞った落ち着いた住空間が現れます。広く大きなツインのベッド、頭上の窓は南向きで、開けると名勝大乗院庭園や奈良ホテル、興福寺などの方角が見渡せます。
真鍮製のパイプが、階段の手すりとして、階段の柵として、または上着などをかけるハンガーとしても使えるように片方の壁面に渡され、その美しいカーブが素敵な空間上のアクセントになっています。
またベッドと反対側にはキッチン、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機などを備えた一画があり、長期間の滞在でも不自由なく「住める」設備がそろっていました。
またその横には茶室のような畳敷きの小部屋、さらに奥にはバスルームと洗面、トイレもあります。
この二階部分はワンフロアすべて宿泊客のために提供されるとのことで、静かで居心地の良い隠れ家として機能するようになっています。
宿としての営業はまだ始まっておらず、11月以降に一般の方に向けた営業を開始するそうです。
詳細はwebページやSNSなどで報告されると思いますので、ぜひ続報をお待ちください。
ところで屋号の「ひとともり」には2つの意味があるそうです。
ひとつめは「人(ひと)と森(もり)」。
その土地の自然、ひかりや水、風や木々といったものと、そこに暮らす人との関係性をデザインする建築。ただ乱暴に土地を切り開き、万人向けに設計された箱物をどんと置くという建築のあり方ではなく、使う人に寄り添い、その土地と人とを結びつけるものとしての建築。そんな長坂さんの信念が、この町家にも息づいています。
現在も日本各地を飛び回り、複数の建築プロジェクトを精力的にすすめる長坂さん。きっとこの人に建ててほしいという方がたくさんいらっしゃると思いますが。この「ひとともり」をきっかけにますます人気者になりそうな気がします。
そしてもうひとつ「一灯り(ひと・ともり)」。
古都奈良を訪れ、日中見どころの多い奈良の社寺を見て回り、ならまちをたっぷり楽しんだあと帰り着く場所。ひとつの灯りが帰る場所としての宿、暮らすように泊まる体験を提供する施設を象徴しているということでしょうか。
街の喧騒から少しだけ離れたほどよい立地で、静かで快適な空間。旅の拠点として魅力的な選択肢がまたひとつ誕生します。
ひとりの建築家によって生み出されたうつくしい空間。
そこに身を置くことにっよって得られる安らぎや、建築のすみずみにまで配されたデザイン。一泊するのが難しければ、生姜足湯やカフェ利用だけでも、その片鱗を味わうことができます。
ぜひ一度訪れていただきたい素敵な場所です。
ひとともり 奈良本店
〒630-8381 奈良県奈良市福智院町1-3
http://hitotomori.net/
生姜足湯休憩所
営業:金曜日・土曜日・日曜日 11:00-16:00
自家製季節のドリンク¥500、三年番茶、よもぎ茶、梅醤番茶、オーガニックコーヒー 各¥400 ほか
生姜の足湯(ひとくち生姜シロップとお茶菓子付)¥1,000
足湯とドリンクのセットで100円引き
https://www.instagram.com/hitotomori_nara/